宇宙を旅する双子探査機「ボイジャー」~数万年後の未来に届けるタイムカプセル~

みなさんは自分の住所を言えますか?
東京?
北海道?
大阪?
でもそれって地球人にしかわからないですよね?
では、宇宙で迷ったときに地球はどこにあるかちゃんと言えますか?
地球の住所は
ラニアケア超銀河団 おとめ座銀河団 局部銀河群 天の川銀河 オリオン腕 太陽系 第3惑星地球 となります。
覚えましたか??
太陽は天の川銀河の中にある恒星の一つですが、天の川銀河には恒星が1000億個以上あります。
さらに、天の川銀河も少なくとも2兆個あるとされる銀河の一つにしかすぎません・・・
もうわけわからないですね・・・
途方もなく広い宇宙の謎を解明すべく、地球人は宇宙の観測を続けています。
今回お話しするのは双子の宇宙探査機・ボイジャー
今もなお飛び続けるボイジャーの大冒険と未来の大仕事のお話をしましょう。
こぶた
住所長いよ・・・
ぶたちく先生
まぁ宇宙で迷ったときにこの住所を言ったところで、たぶんわからないけどね・・・

ボイジャー計画

1965年にあることが明らかになります。
「1970年代後半に探査機を打ち上げれば、木星・土星・天王星・海王星をすべて訪れることができる」
1983年にこの4つの惑星が地球から見て同じ方向に並ぶ、というのが理由ですが、このような機会は176年に1回しか訪れない貴重なものでした。
このミッションは「グランドツアー」と呼ばれました。
しかし、このミッションにはあまりに高額な費用がかかるため、結局、木星と土星の探査を目的とした「マリナー木星・土星計画1977」としてNASAに承認されました。
そして、この計画は2機の探査機を打ち上げ、不測の事態にも対応できるようにしたのです。
「マリナー木星・土星計画」は打ち上げ前に名称を公募されこのように決まりました。
ボイジャー計画
ボイジャーは「航海者」とか「旅行者」という意味があります。
まさに宇宙の人類未踏の惑星を目指す2機にはうってつけの名前でした。
こぶた
「マリナー」って何?
ぶたちく先生
マリナー計画は10号まで探査機が打ち上げられていたんだ。その計画を引き継いだのがボイジャー計画だね!

ボイジャーの目的

ボイジャー計画では、これらの2機の目的を次のようにしました。
ボイジャー1号は木星、土星だけでなくそれぞれの衛星や環の観測をすること。
さらに、うまくいけば冥王星の探査も可能なように設計されていました。
また、ボイジャー2号は木星、土星、天王星、海王星とそれぞれの衛星や環の観測でした。
木星、土星の探査が第一でしたが、当初の「グランドツアー」構想の可能性も残すように、打ち上げ日を設定したのです。
ではこの双子の探査機の記録を順番に追ってみましょう。

ボイジャーの宇宙航海

打ち上げ

1977年8月20日、ボイジャー2号打ち上げ
1977年9月5日、ボイジャー1号打ち上げ
ついに双子の大冒険が始まります。
皆さん気になったかもしれません。
「なんで2号のほうが先に打ち上げるんだ?」
これは、1号の軌道のほうが、2号よりも早く木星と土星にたどり着くことになっていたからです。
何はともあれ、2機とも無事に打ち上げられます。

木星にて

予定通り1号が先に木星に接近し、観測を開始します。
1979年3月5日には木星に最接近し、衛星イオや木星の環を観測します。
また、木星の表面に見える巨大な渦(大赤班といいます)が巨大な嵐であることを発見します。
遅れること4か月、1979年7月9日は2号が木星に最接近します。
2号機は衛星アドラステアを発見。その他イオの火山活動を明らかにします。

土星にて

1980年11月9日、1号が土星に最接近します。
1号はアトラス、プロメテウス、パンドラといった3つの衛星を発見。
また土星の環の構造を観測し、明らかにします。
また衛星タイタンの大気の調査を行う一方で、冥王星への探査を断念します。これは、冥王星よりもタイタンの探査を優先したためです。
これにより、1号機は惑星探査のミッションを終了。
太陽系外への旅をはじめます
一方、1981年8月25日、今度は2号機が土星に最接近し、土星の大気を観測します。
2号はこれで当初予定していたミッションを終了します。
しかし、2号は軌道の関係上、天王星まで行くことが可能だったため、議会で追加予算を訴え、無事承認されます。
これにより、2号は天王星に向かうことになったのです。

天王星にて

1986年1月24日、2号は天王星に最接近します。
天王星の衛星を11個発見し、天王星の環を調査しました。
これにより、天王星の環が木星や土星の環と異なる性質を持ち、また、形成時期も若いことが判明します。
あまり知られていませんが、木星、土星、天王星、海王星は環を持っています。土星がすごく目立つ環を持っているだけです。
その他天王星の衛星ミランダを観測したり、天王星の磁場の存在、そしてその磁場が傾いていることを発見します。

海王星

1989年8月25日、2号は海王星に最接近します。
これにて2号は木星、土星、天王星、海王星のグランドツアーを達成します。
海王星の観測で、衛星を6個発見します。
また、それまで途切れていると思われていた海王星の環が、一周していることを観測したり、衛星トリトンにフライバイし、トリトンの表面を観測します。
これにて2号も太陽系の探査ミッションを終了し、太陽圏の外側に向けて旅を始めます。

ペールブルードットアンドフレンズ

2号は海王星を観測した後、カメラを止めます。
これは、今後2号が画像を撮影する機会がなく、その他のデータ収集に集中するためです。
そして1号は1990年2月14日、太陽から60億キロメートルの地点で最後の写真を撮影します。
タイトルは「太陽系の家族写真」です。
これは宇宙から太陽系の惑星が全部入った画像を撮ろう!というものでした。
複数の写真をつなぎ合わせて、太陽系の惑星が入るようにしたのです。
1号のいる場所からあまりに遠い水星とカメラが検出できなかった火星は映りませんでしたが、最後にこの写真をとり、1号機もカメラを止めました。
こぶた
こんなに広い宇宙だから、太陽系の惑星ってだけで確かに家族みたいだね!
ぶたちく先生
そうだね。火星と水星が映ってないのが残念だね!

ゴールデンレコード

2012年8月25日、1号が太陽圏の外に出ると、6年後の2018年11月5日、2号も太陽圏の外に出ました。
この記事を書いている2022年現在、打ち上げから45年経ちますが、今もまだこの双子は冒険を続けています。
実は、この双子はレコードを搭載しています。
ゴールデンレコードと呼ばれるこのレコードには、地球の文化を伝える音や画像が収録されています。
いつか、地球外生命体が見つけるのか、未来の宇宙旅行者が見つけるのかわかりませんが、この時の地球の様子を伝え、地球人の存在を知ってもらおうという試みです。
タイムカプセルみたいですね!
日本に関することも収録されており、日本語の挨拶や尺八の音楽が収録されています。
こぶた
レコードはダメにならないの?
ぶたちく先生
かなりの時間は持つようになっている!誰かが見てくれたらすごいことだ!

最後に

いかがでしたか?
最初に話した地球の住所で言えば、やっと最後から二つ目の「太陽系」を出たところです。
人工物として初めて太陽系の外にでた双子は、現在オリオン腕の中を冒険しています。
2025年頃まではこのまま運用できますが、それ以降は1号も2号も通信できなくなります。
しかし、地球との通信が途絶えても、双子はまだまだ飛び続けます。
太陽系の外の恒星系にたどり着くのは何万年も先のこと。
誰かに見つけられるのはいつのことでしょうか?
そのときに双子は、生まれ故郷の地球の住所を伝えられるでしょうか?
リュックに入れたタイムカプセルを無事に渡せるでしょうか?
残念ながら私も、今これを読んでいる皆さんもその時にはこの世界にいませんが、彼らの大冒険が実を結ぶように祈りたいと思います!
参考:NASAHP