タコ②「タコの進化とイカとの違い」~お母さんタコの愛情は海よりも深いのだ~

どうしてこんな体に?

前回の記事で、タコの不思議な体についてお話ししてきました。
しかし、どうしてタコはこんな体になったのでしょう。
タコとイカって海の中でも特徴的な感じがするのは私だけではないはずです。
タコの進化の過程について調べました。

タコの先祖は貝

大昔もタコの先祖は海にいました。
タコのご先祖様・・・それは
オウムガイやアンモナイトを想像してもらってもいいかもしれません。
タコの先祖は、殻を背負って海の中にいました。
岩にへばりついたり、海底を動いたり・・・
しかし、タコの先祖はそのような生活を選びませんでした。
「海の中を泳ぎたい!」と思ったのです。
こぶた
自由に泳ぐ魚たちをみて羨ましく思ってもおかしくはないよね・・・

どうやって泳ごうか

しかし、欲望だけではどうにもなりません。
もともと泳げないのに、重たい殻を持ったままどう泳ぐか・・・
そこでひらめきます。
「そうだ!貝殻の中に空気を入れて浮けばいいんだ!」
こうして、タコの先祖は殻を円錐系に伸ばします。
さらに、伸ばした殻の空洞部分にガスをためて浮遊できるように進化したのです。
これが今でいうオウムガイの一種だったと言われています。
ぶたちく先生
現代の貝にも殻の中に空気を入れて浮力を得る種があるよ!

泳いでいるとは言えないね!

タコの先祖の進化は続きます。
「確かに浮遊はできるけど、泳いでるとは言えないよね・・・」
タコの先祖は泳ぐために殻をどんどん小さくします。
そして、完全に殻を取っ払うことに成功します。
さらに、貝の時代には平べったかった足も枝分かれします
こうして、現在のタコやイカの姿になるのです。
こぶた
タコは約2億7000万年前に進化して誕生したそうだよ!

親戚たち

タコの親戚と言って一番最初に浮かぶのはもちろんイカでしょう。
タコとイカはもともと共通の先祖ですが、異なる生活スタイルを選びました。
進化の過程でイカはスピードを選びます。
イカの速さは時速40㎞ほど。
一方、タコは筋力を選びました。
イカのように早くは泳げませんが、自慢の筋肉を利用して生活することになります。
ちなみに、オウムガイから進化した仲間には、アンモナイトやべレムナイト(イカによく似ている!)がいましたが、両方とも絶滅。
現在残っている頭足類は、オウムガイ、タコ、イカ。
タコやイカは進化して生き残った種であるともいえるでしょう。
こぶた
タコの先祖が貝なんてビックリだよ!
ぶたちく先生
次は同じ先祖を持つタコとイカの違いについてお話しするよ!

タコとイカの違うところ

タコとイカが共通の先祖を持つことがわかりました。
では、タコとイカの違いは何でしょうか?
泳ぐスピードや筋力についてはわかりましたが・・・
順番に見てみましょう。

墨の質

タコとイカも共通して墨を吐く生き物です。
しかし、この墨もタコとイカのものは性質が異なっています。
まず、イカの墨はドロドロしています
水中で吐くとドロっとしてその場に留まるらしいです。
一応身代わりの術のようで、敵が墨に気を取られている間に逃げてしまおう、という作戦。
対してタコの墨はとてもサラサラしているそうです。
水中で吐くと分散して、煙幕のような役目を果たします。
タコは海底などに擬態することができるので、その間に隠れる作戦でしょうか。
ちなみに「イカスミパスタ」は聞きますが、「タコスミパスタ」は聞かないですよね?
タコの墨は非常に取り出しにくい上、量もイカに比べて少ないため、あまり食用で用いられないとのこと。
しかし、美味しくない、というわけではないらしいです。
ぶたちく先生
一応、タコスミを食べられるお店もあるみたいだよ!

吸盤

タコもイカも吸盤を持っています。
もちろん、モノをつかむ、という意味では同じなのですが、構造が違っています。
タコの吸盤は「モノを吸い付ける」ためにあります。
タコは掴みたいものに吸盤を付けて、筋肉の力で吸盤の中を真空にしてものを吸い付けます。
これは家庭で使うような吸盤とよく似ていますよね。
タコの筋力で真空にするので、タコが死ぬと吸盤の力はなくなります。
一方、イカの吸盤は「モノをひっかける」ようにできています。
イカの吸盤には硬い歯のようなものが付いており、それでものをひっかけることができます。
筋肉を動かさなくても効果があるので、死んだ後もモノが引っ掛かります。
イカを調理する際に吸盤を取るのはこのためです。
イカは素早く泳ぎながら獲物を捕まえるために、このような吸盤になったのです。
こぶた
筋肉の力で吸盤を真空に・・・?すごいな・・・

その他違うところ

タコとイカの違いはまだまだあります。
例えば、タコは特定の場所を住処にして生活します。
しかも、きれい好きで、食べた貝の殻は外に捨てるそうです。
一方イカは住処を持ちません
海の中を自由に放浪しています。
さらに、タコもイカも賢い生き物です。
タコは道具を使うことができる唯一の無脊椎動物。
反対にイカは、「自分がイカである」と認識できるそうです。
ちなみに「道具を使う」「自分を認識できる」能力を有する動物はほとんどいません。
タコもイカもとても賢い動物なのです。
こぶた
タコやイカが賢い生き物って知らなかったよ・・・
ぶたちく先生
人も動物も見た目で判断したらダメってことだよ!

タコ知識

最後はタコに関する豆知識です。

なぜ悪口に使われるのか

このタコ野郎!
こんな悪口を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
どんなにポジティブな人が聞いても悪口に聞こえるでしょう。
もともとは、出世ばかり考えている人を、上にヒラヒラと昇る「凧」に例えてタコと言ったという説があります。
その他、偉そうなお坊さんの頭をタコに見立てて「タコ」と言ったという説も。
その他にも、野球で例えば4打席凡退の時に「4タコ」というのもありますね。
これは、「相手投手に骨抜きにされた」=「軟体動物」というところからタコと呼ばれているそうです。
ぶたちく先生
タコにも失礼だよ!

血は青い

私たち人間の血は赤色。
しかし、タコの血は青色です。
私たちの血が赤いのは、赤血球中のヘモグロビンが赤色だからです。
さらにヘモグロビン中の鉄が酸素と結びつき、鮮やかな赤色になります。
しかし、タコにはヘモグロビンがありません
ヘモグロビンの代わりにヘモシアニンというたんぱく質が酸素と結合しています。
ヘモシアニンそのものは無色ですが、ヘモシアニン中の銅が酸素と結びつくと青色になるのです。
実は血が青い生き物はタコの他にもイカ、エビ、カニなど少ないわけではありません。
こぶた
タコの血を見ることがあんまりないからイメージがないなぁ・・・

日本はタコの天敵

日本はタコの消費量が世界一です。
世界一どころではありません。
世界の消費量の6割を日本が占めています。
ちなみにイカの消費量も日本が世界一です。
でも日本人は毎日タコを食べるわけではありません。
それでも1位なのはそもそもタコを食べない国がたくさんある、ということが理由かもしれません。
タコがデビルフィッシュと呼ばれる、というのは耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
これは、旧約聖書の中に「水の中にいるもので食べていいのはヒレとウロコがあるものだけだよ。それ以外のものはけがれてるから食べてはいけないよ」という意味の記述があるためです。
旧約聖書はユダヤ教の聖典なので、ユダヤ教徒は全員タコを食べません。
また、イスラム教徒も旧約聖書を聖典としているので、ほとんど食べません。
イギリスやアメリカも食べない人がほとんどだそうです。
アジア圏でも日本、韓国、タイ以外では積極的には食べられないようです。
逆にヨーロッパでもスペイン、イタリア、フランス、ギリシャなど地中海沿岸の国では伝統的にタコを食べます。
宗教上ダメな人々は別として、どちらかといえばタコを食べる対象として見ているかどうかが分かれ目かもしれません。
ぶたちく先生
これは何がいいか悪いか、という話ではなくて単純に文化の違いだよね・・・

タコの最期

タコの最期は意外な終わり方をします。
実は、タコの寿命は数年程度と言われていますが、まだよくわかっていません。
しかし、数年の寿命の最期にたったの一度の繁殖をします。
まず、オスはメスと交尾すると死にます
残されたメスは卵を産みますが、ここから孵化まで壮絶な子育てを始めます。
短い種で1か月、長い種で半年以上も卵を守ります。
この間、お母さんタコは一切餌もとらず、卵から離れません。
卵についたごみなどを取り除き、周りの水をきれいに入れ替えながら卵を守ります。
お母さんタコは徐々に体力がなくなっていきますが、外敵が来た場合には力を振り絞って戦います。
卵から赤ちゃんタコが生まれるとき、お母さんタコは卵に水を吹きかけ、子供たちが卵の殻を破るのを助けます。
そして、赤ちゃんの孵化を見届けると、お母さんタコは力尽きて死んでしまうのです。
つまり、タコの赤ちゃんは生まれながらに親がいません。
タコの赤ちゃんは1回の産卵で数万匹生まれますが、大人になれるのはほんの数匹。
自然界は本当に厳しいです・・・
こぶた
お母さんタコの愛はなんて深いんだ・・・
ぶたちく先生
タコのお母さんが卵を守りながらなでたりしてる姿も確認されているんだ・・・

最後に

いかがでしたか?
生き物としてタコに興味を持ってもらえたら嬉しいです!
タコだけでなく、食事をするときに、動物、魚、植物に感謝することはとても大事だと思いました。
水族館に行ったら、ぜひタコもゆっくり観察してみて下さいね!