古事記の物語⑤~命を狙われまくる新主人公・大国主登場~

無事にヤマタノオロチを討伐し、クシナダヒメと結ばれたスサノオノミコト。
須賀の地ですがすがしくなり、時代は少し流れます。
今回から主人公はしばらく「大穴牟遅神」(オオアナムヂノカミ)になります。
オオアナムヂノカミは後に「大国主神」(オオクニヌシノカミ)と呼ばれる神です。

求婚の旅へ

オオアナムヂノカミはスサノオの子孫にあたります。
ちなみにスサノオからとオオアナムヂノカミの間は6代あるので、結構離れている感じですね。
オオアナムヂノカミにはたくさんの兄弟神がいました。
それらの兄弟神を総称して「八十神」(やそがみ)といいます。
話は唐突に進みます。
八十神たちは稲羽(いなば)という地にいるヤカミヒメを妻にしたいと考えていました。
稲羽は現在の鳥取県東部にあたる地域で、今は「因幡」と表記されています。
八十神たちは求婚のため稲羽の国に向かいます。
そして、その一行の最後尾に荷物持ちとしてついていったのがオオアナムヂノカミでした。
こぶた
兄弟全員が一人の女性に求婚する旅・・・?
ぶたちく先生
まぁ・・・魅力的だったんだろうね・・・

因幡の白兎

いじわるな八十神

稲羽へと向かう八十神一行が、気多(けた)の海岸にたどり着いた時です。
これも鳥取に気多岬(気多ノ前)と呼ばれる場所が残っています。
気多の海岸に皮を剥がれたウサギが倒れていました。
八十神たちはウサギをからかって
「傷を治したければ海水を浴びて風によく当たるといいよ!」
といいます。
うさぎはそのまま言葉を信じて海水を浴びます。
考えただけで痛いですよね・・・
ウサギは激痛のあまり泣きながらもがき苦しみます。
こぶた
なんて嫌な奴らだ!!!

サメをだましたウサギ

そこに最後尾を歩いていたオオアナムヂノカミが通りかかります。
オオアナムヂノカミはウサギに
「どうして泣いているんだい?」
と尋ねます。
ウサギは
「隠岐の島からこちらに渡ろうと思って、サメをだまして利用しようとしたのです。
しかし、最後にばれてしまい体の皮をすべてはがされてしまいました。」
と話しました。
なんでも、ウサギはサメに
「あなたたちの種族と私たちの種族、どちらが数が多いか数えませんか?仲間を連れて、そこに並んでください」といったのですが、
ウサギの本心は、並ばせたサメの体の上をピョンピョン飛んで、海を渡りたかっただけだったそうです。
さらにウサギは、八十神たちに騙されて、海水を浴びたことオオアナムヂノカミに伝えました。

優しいオオアナムヂノカミ

それを聞いたオオアナムヂノカミは
「すぐに川に向かって真水で体を洗いなさい。そしてガマをとってそれを敷いた上に寝てゴロゴロすればよくなるだろう」といいました。
「ガマ」というのは水草で、その花粉は傷薬になるとされています。
ウサギは教えらえれた通りにすると、みるみる体は元通りに治ったのです。
ウサギはオオアナムヂノカミに感謝し、言いました
「いじわるな八十神たちはヤカミヒメと結婚することはできないでしょう。ヤカミヒメと結婚するのはあなたです。」
こぶた
ウサギは可哀そうだけど、別にいい奴でもないよね・・・
ぶたちく先生
そうだね・・・これはオオアナムヂノカミの優しさが伝わるお話しだね!

ヤカミヒメとの結婚とオオアナムヂノカミの死

ウサギの予言が的中する

ヤカミヒメの元に到着した八十神一行。
しかし、ヤカミヒメは八十神たちの求婚をことごとく跳ねのけます。
最後にやってきた荷物持ちのオオアナムヂノカミ。
その姿を見て、ヤカミヒメは宣言します。
「あなたの妻にしてください!!」
海岸で出会ったウサギの予言は的中したのです。
ぶたちく先生
結婚の決め手は何だったんだろうね・・・

怒る八十神

しかし、八十神たちは激怒します。
八十神たちは話し合いをし、なんとオオアナムヂノカミを殺すことにしたのです。
八十神は手間という山の麓を訪れてオオアナムヂノカミに
「この山に赤い猪がいる。私たちが追ってくるからお前は下で待ち受けて捕まえるのだ」
と命令します。
オオアナムヂノカミは下で待ち受けます。
しかし、八十神はイノシシに似た大岩を火で真っ赤に焼き、山の上から転がしたのです。
下で待ち受けるオオアナムヂノカミは赤く焼けた大岩を受け止め、焼け死んでしまいました。
ちなみに、この出来事を語り継ぐように、現在も鳥取県に「赤猪岩神社」があります。
こぶた
八十神ども・・・重ね重ねいやな奴らだね・・・
ぶたちく先生
八十神たちはオオアナムヂノカミを見下していてプライドが許さなかったんだろうね・・・

オオアナムヂノカミ復活

生き返るオオアナムヂノカミ

無念にも殺されてしまったオオアナムヂノカミ。
それを知った母神・刺国若比売(サシクニワカヒメ)はとても悲しみます。
すぐに高天原に向かい、カミムスビに助けを求めます。
カミムスビは最初に登場した3神にあたる大重鎮。
カミムスビはサシクニワカヒメの話を聞くと、キサガイヒメとウムガイヒメを遣わせてオオアナムヂノカミを生き返らせます
神様たちはなんでもアリなのです。
こぶた
さすが大重鎮の神様だね!

オオアナムヂノカミの死Part2

怒りの収まらない八十神。
オオアナムヂノカミが生き返ったことを聞き、またオオアナムヂノカミを殺す作戦を思いつきます。
どうしてこんなにすぐに殺そうとするのでしょう・・・
神を名乗らないで欲しいですね・・・
八十神は、オオアナムヂノカミを山の中に誘い込みます。
ノコノコと誘いに乗るオオアナムヂノカミ。
八十神たちは、大木に切り込みを入れて楔(くさび)を打ち込み、その間にオオアナムヂノカミを挟むと、楔を引き抜いて挟み殺したのです。
ぶたちく先生
すごく回りくどい殺し方だね・・・

オオアナムヂノカミの復活Part2

挟み殺すという、意味不明な方法で再び殺されたオオアナムヂノカミ。
デジャブのようにサシクニワカヒメがまた登場します。
すると、今度は自らの力でオオアナムヂノカミを生き返らせました。
サシクニワカヒメはオオアナムヂノカミにいいます。
「ここにいるといつかは八十神に滅ぼされてしまうでしょう・・・すぐにここを離れるのです。」
サシクニワカヒメはオオアナムジノカミを紀伊の国にいるオオヤビコノカミのもとへと走らせました。
こぶた
お母さん・・・!自分で生き返らせることもできたんだね・・・

根の国に向かうオオアナムヂノカミ

しかし、八十神たちはあきらめません。
手を尽くしてオオアナムヂノカミが紀伊の国にいることを突き止めます。
そして、八十神たちは紀伊の国に押し寄せるのです。
八十神たちは弓を構えてオオヤビコノカミに迫ります。
「オオアナムヂノカミを引き渡せ!」
「引き渡すわけないだろう!」
オオヤビコノカミはそう言ってオオアナムヂノカミをこっそり逃がします。
その時、オオヤビコノカミはこういいます。
「スサノオノミコトがいらっしゃる根の堅州国(ねのかたすくに)に向かうのです。きっとあなたを助けてくれるでしょう。」
こうしてオオアナムヂノカミは根の国に向かうことにします。
こぶた
スサノオはオオアナムヂノカミのご先祖だよね?
ぶたちく先生
そうだよ!次回はオオアナムヂノカミとスサノオのお話しだよ!