同調してしまう君へ~言いたいことも言えないこんなアレは~

604年、聖徳太子は十七条憲法を制定しその第1条に「和をもって貴しとなす」と書きました。
少し前の日本ではこんな言葉がはやりました。「空気を読む」
多分言いたいことは違うと思うのですが、どちらも「協調性」を重んじる日本的な発想ですね。
でも、この協調性も自分の意見を出せなくなるようになると、本末転倒かもしれません。
最近は書籍等のタイトルにも多い「同調圧力」という言葉。
今回は「同調」についてまとめてみました。
こぶた
同調しすぎると周りに流されてしまうっていう感じになってしまうのかもしれないね・・・
ぶたちく先生
無意識に視線を落として流されることに慣れてしまう前に、同調について考えてみよう!

同調と心理学者アッシュの実験

同調とは

普段の生活で、人間はたくさんの判断や決断を行っています。
その判断の中では、多数派の意見や行動を参考にすることもしばしばあります。
そして、自分の意見や行動も多数派に合わせる、という心理傾向があるのです。
このような傾向「同調バイアス」といいます。
ただ、同調バイアスというのは人間が生きていくために備わっている心理です。
だから誰にでも身に覚えはあるのではないでしょうか。

アッシュの同調行動実験

実験の内容

この同調に関しては、アメリカの心理学者アッシュによる有名な実験があります。
実験の内容はこうです。
まず、8人の大学生のグループを作ります。
そして、カードを2枚渡し、1枚のカードには直線が1本記載されています。
さらにもう1つのカードには、長さの異なるA、B、Cの3本の直線が書いてあります。
1枚目カードの線の長さと同じ長さの線をABCから選んで回答してください、という簡単なテストです。

実験のポイント

この実験に当たっては、次のようなルールで行いました。
・8人のうち、被験者は1人だけ※つまり残り7人は全員サクラ。
・被験者は残り7人とは面識がない
・1人ずつ順番に回答していくが、被験者は常に7番目に回答する※つまり、他の6人の意見を聞いてから答える。
・最初の数問はサクラたちは正しい答えを言うが、途中から間違った回答をする。
・問題の難易度は、単独で回答する場合には99%正解する問題で普通なら間違えることはない。

実験の結果

実験の結果は次のようになりました。
まず、被験者以外の7人全員が誤った回答をした場合、被験者の誤答率は37%まで上昇しました。
また、サクラのうち1人だけが正解し、6人が誤答した場合、被験者の誤答率は5.5%にまで低下しました。
この実験結果からわかることは、普通なら間違えないような問題でも、全員一致の意見には影響を受けてしまうこと。
ただ、一人でも反対者がいれば自分の意見の表明が非常に容易になることです。
1人でも自分の意見と同じ人がいるかいないかで全く異なる結果になることが分かりました。
こぶた
自分の意見を言うのがこんなに難しいなんて・・・
ぶたちく先生
みんなが違う意見だと言いたいことも言えなくなってしまうんだ

同調が起きやすい場面と同調圧力

同調はどのようなときに起きるか

アッシュの実験では、自分と同じ意見の人がいなければ同調が起きやすいという結果がでました。
しかし、その他にも同調が起きやすい状況があるとされています。
それは「集団凝集性」が強いグループであること。
つまり、グループのメンバー同士の結びつきが強い、ということです。
このようなグループでは「グループの結束を乱したくない」という心理が働きやすく同調が起こりやすくなります。
このことも既に実験されており、集団凝集性の高いグループは同調しやすいという実験結果があるのです。
こうした同調は、その集団に対して自分が価値を感じていたり、魅力を感じている場合に起きやすくなります。
その他、公的な場所では同調が起きやすいとされています。
自分の意見を言う場面ではなく、人前で公的な意見や反応を求められる状況の方が多数派への状況が起きやすいです。

なぜ同調するのか

同調には二つあるとされています。
まずは情報的影響
情報的影響とは他者の判断を有用だと考えて自分の考えに取り入れることです。
例えば、商品を購入する際にインターネットのレビューで評価が高い商品を選択したり、飲食店に入る際に行列ができているところに行こうとする、というようなことが挙げられます。
もう一つは規範的影響です。
これは「他者から嫌われたくない」「集団の輪を乱したくない」という心理から行う同調のことです。
本心では別の意見があったとしても批判されることを恐れてつい多数派の意見に合わせてしまった。というような場合もそうです。

同調圧力とは何か

最近よく使われるようになった「同調圧力」。
これは、自分の意見があっても、多数派の意見に合わせて考え、行動するように暗黙のうちに強制することです。
ただ、これは特に周りが意識していないことも多いです。
「強制する」とありますが、人の意見を変えさせようとするだけではなく、自分からプレッシャーを感じる場合もあるからです。
最近はSNSが発達し、自分の意見を言えるようになりました。
それと同時に意見に対する反論や批評、批判が増えたのも事実です。
こうなってくると、意見を発する側も自分の意見が少数派で批判されるのが怖くなり、周りの意見に合わせるという意識が働くのです。
こぶた
すごくわかるよ・・・みんながとった行動と自分の行動が違う時になんか自分が間違っている気がするんだよね・・・
ぶたちく先生
自由に生きていく日々を大切にしたければ行きたい道を行けばいいんだよ・・・
こぶた
先生・・・今日なんかおかしくない?

同調の効果

同調の効果がいいパターン

同調というのもがあるとして、なぜ同調がダメなのでしょうか。
まず、同調そのものに関しては、決して悪いものではありません。
すごく簡単なことでいえば、外に出たときに、近くを歩いている人の多くが傘を持っているのに気づいたらどうしますか?
多分「雨降るのかな?傘持ってこー」ってなりますよね。
先ほどの情報的影響や規範的影響のように、その場における判断材料の一つとして、非常に有効な心理なのです。
例えば、東京ディズニーランドでは地震速報を受信すると、スタッフやキャラクターも頭を守ってその場にしゃがむそうです。
そうなると、来園者たちも同調して同じ行動をとるため、安全を確保することもできます。
以前このことがニュースにもなっていました。

同調の危険

しかし、一方で、災害などでパニックになった場合にも同調効果は働きます。
例えば、多数の人を収容できる劇場などを想像してください。
そのような劇場で火災が発生した場合、パニックで脱出しようとする人が出口に殺到したら・・・
同調した人々も出口に向かっていき、将棋倒しになったり、被害が拡大してしまう恐れがあります。
学校や職場、施設などで行われる避難訓練は、災害に対処する方法ではなく、災害があったときにパニックを起こさないために行うものです。
日頃からの心構えもとても大事になってきますよね。

バンドワゴン効果

ここまで同調というものについてお話してきました。
この同調バイアスはマーケティングなどでも利用されています。
例えば
「〇万人が愛用している!」
「チケットが数分で完売!」
のようなPR文言を見たことがあるでしょう。
これも見た瞬間に「こんなに人気なのか!」という同調効果を狙った文言です。
このように「みんなが持っているからいいものなのだ、自分も持ちたい」と思わせることをバンドワゴン効果といいます。
その他にも、わざと店内の席数を少なくし、行列を発生させて人気店にみせる、商品を売り切れのままにするなどのテクニックもあります。
ちなみに、余談になりますが「周りと同じにはなりたくない」という人もいます。
このような人は逆に「期間限定」とか「個数限定」とかの商品を欲しがる傾向にあります。
バンドワゴン効果とは逆で「皆が持っていないから欲しい」という現象を「スノッブ効果」といいます。
こぶた
自分にとって本当に必要なものかちゃんと向き合って、意見を持つことが何よりも大切だね!
ぶたちく先生
真っすぐ向き合う現実に誇りを持つためには戦うことも必要なんだよ!
こぶた
そのフレーズどうしても言いたかったんだね・・・まぁかっこいいいけどね・・・

最後に

いかがでしたか?
この記事を通してて書きましたが、同調というのは決して悪いことではありません。
敵意帰属バイアスの回でも書きましたが、「人間はこのような傾向にある」ということを知っておくことが大事だと思うのです。
また、これと同じぐらい大事なのが、みんなが常に同じ意見である必要はないということです。
人それぞれ好きな食べ物、趣味が違うように、人それぞれに考え方があるのです。
意見が違う人に出会ったときに大切なのは、相手を否定することではなくて、耳を傾けることです。
相手の意見を聞いて、自分の意見を話して、自分や相手の考えが変わるかどうかは結果でしかありません。
そこで止めることができれば、お互いに一番気持ちよく終われるのかな、と思いました。
同調に悩んだらみなさん、反町隆史さんの「POISON」を聞いて元気を出してくださいね!