第二次世界大戦に敗戦し、史上初めて占領された日本。
戦後は平和主義を国是とし、復興の一歩を踏み出します。
しかし、当時、既に始まっていた冷戦に翻弄されながら日本の戦後は進んでいきます。
結果、今の日本は平和でしょうか?
戦争していないという意味での平和は間違いないでしょう。
ただ、周辺国の脅威にさらされ、なかなか枕を高くして眠ることができないのも現実ですよね。
今回は戦後から現代日本の地政学を見てみましょう。
特にロシア・ウクライナ戦争があってから、脅威を身近に感じるようになったね!今まで気にしてなかっただけかもしれないけど・・・
今回は、アメリカ、ロシア、中国の3か国からみた日本を考えてみよう!
目次
アメリカから見た日本
第二次世界大戦で日本を下し、太平洋と日本を手に入れたアメリカ。
多くの犠牲の上に、両国は現在強固な同盟関係にあります。
しかし、遠く離れた両国はなぜ同盟関係を続けられるのでしょうか?
もともとは中国だったアメリカのパートナー
第二次世界大戦終結後、アメリカは太平洋の制海権を手中に収めます。
戦後、アメリカは日本が二度と脅威とならないよう、軍事力を奪うことにします。
しかし、アメリカと共に戦勝国となったソ連の脅威が変わることはありません。
ソ連の社会主義の手が東南アジアや太平洋に進出することを恐れたのです。
力を失った日本に、ソ連を阻むことはできません。
そこで、アメリカは社会主義の防波堤の役割を中国に任せるべく動き出します。
しかし、中国内戦で共産党と国民党が激突。
国民党は共産党に敗れ、国民党は台湾に亡命してしまうのです。
社会主義国となった中国。
アメリカはあてが外れてしまいます。
そこで、アメリカは防波堤の役割を中国から日本に切り替えることにするのです。
防波堤って・・・でも冷戦初期は戦争も現実になった可能性もあるから仕方ないのかな?
警察予備隊の編成
日本に社会主義の防波堤という役割を負わせたいアメリカ。
そんなときに起こったのが朝鮮戦争です。
日本が統治していた朝鮮半島は、戦後、北をソ連が、南をアメリカが分割統治しており、それぞれが国家として独立していました。
大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)ですね。
朝鮮戦争は、韓国と北朝鮮の戦争ですが、もちろんこれはアメリカとソ連の代理戦争です。
アメリカは朝鮮戦争のために日本に駐留していた部隊を朝鮮半島に送り込みます。
アメリカ軍は日本で治安維持を任務としていましたが、不在となると、まだ戦後復興の中で不安定な日本の治安が心配です。
そこでアメリカは日本に「警察予備隊」を組織させます。
警察とは言うものの、自衛隊の前身でもある事実上の軍隊です。
もちろんこれは、日本の防波堤としての能力を持たせるためのアメリカの行動だったのです。
アメリカも身勝手ではあるよね・・・でも、実は当時のアメリカにとって日本はとても重要だったんだ
日本の地理的条件の良さ
このように書くと、日本は妥協されて選ばれたようにも見えますが、そういうことでもありません。
それは日本の地理的な条件の良さがあるからです。
アメリカの脅威であるソ連と中国の太平洋進出を阻むかのように南北に長い日本。
さらに、日本からは東南アジアの国も近く、特に沖縄は東南アジアほぼ全体に睨みを利かせられる絶好の位置にありました。
日本が主権を回復した後も1972年まで沖縄が日本に返還されませんでした。
これはアメリカがいかに沖縄を重要視していたか、ということを示しています。
アメリカの都合で軍事力奪われたり、持たされたり・・・
しかし、なんといっても、終戦間際には特攻攻撃を行い、民間人までもが抵抗する国です。
戦後間もない日本にアメリカが軍事力を持たせることを躊躇したのも仕方ないといえるでしょう。
今でも大陸間弾道ミサイルの射程である沖縄の半径1万キロ以内で、世界の主要都市をほぼカバーできてしまうそうだよ!
日米安全保障条約
アメリカが日本を同盟国に選んだことは日本にとっても大きなメリットをもたらします。
第二次世界大戦の平和条約と同時に締結された日米安全保障条約。
これは、アメリカが日本に駐留し、日本を防衛することを取り決めたものです。
この条約があれば、アメリカは引き続き日本に軍隊を置き、ソ連と中国をけん制することができます。
一方、日本にとっては、アメリカの軍事力に守られているため国防を考える必要がなく、経済復興に全力を注ぐことができたのです。
アメリカにとってメリットがあったので、第二次世界大戦後の日本の国際復帰を急ぎ、日本の独立や経済復興を支援しました。
結果的に、日米安全保障条約の締結は、日本が戦後約20年程度でGNPベースで世界二位まで成長したこととは無縁ではないでしょう。
日本にとってはとてもタイミングがよかったんだ。もしかしたら占領も何十年と続いた可能性もあるからね!
今後のアメリカとの関係
こうして現在に至るまで、日本とアメリカはお互いに重要な同盟国として70年に渡り良好な関係を維持してきました。
しかし、今後もずっと続くという保証はどこにもありません。
軍事技術が発達した現在、第二次世界大戦後ほど日本の位置的重要性は高くないという見方もあるからです。
また、アメリカの中で他国のお世話までする必要がないとの声があることも事実です。
ただ、『中国とロシアがアメリカにとっての脅威であり続ける限り』少なくともアメリカにとって日本がインド太平洋地域における重要国であることは変わらないでしょう。
太平洋からインド洋一帯の監視をしているのは在日米軍だからです。
とはいえ、未来のことは予測ができないことだらけです。
日本は常にアジアおよび世界全体に目を配り、孤立しないようにしなければなりません。
日本を防衛することがアメリカの国益になるから日本を守っているだけ、っていうことだよね?
アメリカを信用するかしないかという議論ではなくて、どこの国も自国の国益を最優先する、という前提を忘れないことが大切だよ!
ロシアからみた日本
実は、アメリカに関する記述を見てもらえれば、ほとんど日本の状況は理解できてしまいます。
ここでは、ロシアと日本に固有の問題について取り上げて見ましょう。
ロシアと日本の固有の問題・・・もちろん「北方領土問題」です
過去の記事でも書いていますが、北方領土は第二次世界大戦終了時に、ソ連がどさくさに紛れて必死で占領した島々です。
ではなぜこの北方領土問題は解決しないのでしょうか?
凍らない港が欲しい
世界最大の国土をもつロシア連邦。
そんなロシアの最大の弱点は「冬に海が凍る」
つまり、冬は船が出せなくなってしまうのです。
ロシアの最大のライバルであるアメリカは海洋国家。
アメリカに対抗するために不凍港は必須なのです。
そして北方領土は不凍港なのです。
冬でも凍らない海、これがロシアが北方領土を手放さない理由その1です。
港が凍っちゃうと軍艦も出せないし、貿易にも影響があるよね・・・
太平洋進出ルートの確保
ロシアが北方領土を手放せない理由その2は、太平洋への進出ルートの確保です。
ロシアの太平洋艦隊はウラジオストクという町に駐留しています。
ウラジオストクは札幌とほぼ同じ緯度にあり、その港も凍らないためです。
しかし、地図を見てみるとわかるように、ウラジオストクは日本海に面した場所にあります。
ウラジオストクから太平洋に出ようとすると、宗谷海峡(北海道と樺太の間)を通過した後、国後水道(択捉島と国後島の間)の間を通るしかありません。
それより北を通るルートでは、海が凍ってしまう可能性があるのです。
必ず凍るわけではないでしょうが、有事の際に凍って通れない!では頼りないですよね。
もし北方領土を手放してしまうようなことがあれば、ロシアの太平洋艦隊は国後水道を通過できす、太平洋に出ることができません。
それはアメリカの太平洋の完全な支配を許すことになるのです。
これが2つ目のロシアが北方領土を手放すことができない理由です。
不凍港が必要ということを知るだけでロシアの行動の目的がわかることがあるよ!
アメリカの不沈空母
戦後、日米安全保障条約を締結する際、ソ連は猛烈に反対しました。
日本がアメリカの同盟国というのがロシアにとっては非常に脅威というだけでなく、米軍の日本の駐留が非常にイヤだからです。
日本が望むように北方領土を返還して、そこに米軍が駐留したら・・・
有事の際には北方領土が対ロシアの拠点であり、不沈空母としての役割を持ってしまうのです。
そんな場所を日本に返すわけにはいかない、ということですね
不沈空母とかっていう言い方は好きになれないな・・・日本自体が兵器のように聞こえてしまうからね
僕も何となくそうだよ・・・北方領土にルーツを持つ人たちが平和に居住できるようになって欲しいよね!
中国からみた日本
中国ともロシアと同様に領土問題がありますよね。
日本は尖閣諸島に領土問題は存在しない、という立場ですが、中国は領有権を主張しています。
しかし、中国が尖閣諸島の領有権を主張したのは1971年と非常に最近のことです。
なぜ中国は尖閣諸島の領有権を主張しているのでしょう。
第一列島線
中国は台湾有事に備えて「第一列島線」というものを定めています。
これは、中国の軍隊の作戦区域であり、対アメリカでの防衛線でもあります。
その目的はその区域での制海権を完全に握ることで本土を防衛するためです。
そして、その第一列島線の内部になぜか尖閣諸島が入っているのです。
もちろん日本に無断です・・・
中国は第一列島線の内側については、自分の領海にするつもりでいます。
そのため、尖閣諸島の領有権を主張し、譲らないのです。
自分のものにしたいから領有権を主張するって悪い時のジャイアンじゃないか!
海底資源と潜水艦の航行
1968年、国連による海底調査で、尖閣諸島近辺の海底に資源が豊富に存在することがわかりました。
エネルギーをはじめとする資源を自給できるというのは非常に重要な要素です。
さらに、尖閣諸島近辺に存在する「沖縄トラフ」
トラフというのは海底にある凹地のことです。
沖縄トラフは東シナ海で最も水深が深く、潜水艦の航行に非常に適しています。
実は、核ミサイルというのは潜水艦から発射することが重要です。
地上から発射しようとした場合、先に相手から攻撃を受けると自国で核ミサイルが爆発するからです。
そのため、普段どこを航行しているかわからない潜水艦にミサイルを搭載し発射するのです。
これらのことも中国が尖閣諸島を狙う理由となっています。
なんか日本が狙われる理由がよくわかったよ・・・
完全な平和は難しいような気がするよね・・・
最後に
3回にわけて書いた地政学からみた日本、いかがでしたか?
歴史や現代の国際関係を理解することに役立てば幸いです。
地理的条件が政治に影響するということがわかって頂けたのではないでしょうか。
機会があればほかの国のことも書ければと思います。
参考書籍:新 地政学(長谷川敦著、朝日新聞出版)