地政学から国を知ろう・日本編①~海というバリアで守られた国~

ロシアとウクライナの戦争が長期化していますね。
日本でも他国から侵攻を受けるリスクが考えられ始めるなど、日本にとっても大きな意味を持つ戦争になっています。
そんななか、「地政学」という言葉をよく耳にするようになりました。
地政学とは、地理的条件を重視しながら国際政治を考える、という学問です。
今回は、地政学から見た日本の歴史と、現代の日本のリスクについてまとめてみました。
こぶた
地政学の本とかもかなり出てるけど読んだことはないかも・・・
ぶたちく先生
全てを理解するのは難しいけど、地政学の考え方なんかが少しわかるようになれば面白いと思うよ!

日本について知ろう!

まずは、日本という国についておさらいです。
私たちは自分たちの住んでいるこの国のことをどの程度知っているでしょう?

大きくも小さくもない国土

日本はユーラシア大陸の東に位置する島国です。
日本の国土は約37.8万平方キロメートル。
これは世界の197か国のうち61番目の大きさ。
なんだか、わかりにくい順位ですが、予想通り大きくはないです。
ただ、小さくもないです。
私たちがよく目にする世界地図はメルカトル図法で書かれたものが多いです。
しかし、メルカトル図法は高緯度の国が大きく表示されるため、日本は小さく見えてしまいます・・・
そのため、日本が「小さな島国」と考えている方は結構多いような気がします。
つまり、決して世界から見て無視できるレベルの小ささではない、ということなのです。
蛇足ですが、本州の面積は世界の島ランキング第7位。
日本人の多くは「本州は島なのか・・・」と思いますが、日本列島というくらいなので、日本の国土は全てが島と言えるでしょう。
こぶた
本州が島・・・九州も島・・・まぁ言われてみればそうだよね・・・

とても広い排他的経済水域

日本は島国であり、海との関わり合いが非常に重要な国家です。
このような国を地政学的に「シーパワー」の国といいます。
国が漁業をしたり資源を採取できる領域を「排他的経済水域(EEZ)」といいます。
これは国際条約で基線から200海里(約370㎞)と定められています。
(※「基線」は説明が難しいので、ざっくり海岸ぐらいで考えてもらっても大きく変わらないと思います。)
実は日本はEEZの広さは世界の中でもかなり広く、なんと世界第6位まで上昇します。
この点からも、ユーラシア大陸の東における日本の存在感の大きさがわかると思います。
ぶたちく先生
僕は小学生の時に「200海里漁業専管水域」って習ったよ。懐かしいなぁ~

近隣に味方らしい味方がいない

日本は島国なので「隣国」はどこ?と聞かれると非常に難しいですね。
周りが海なので、屁理屈をいえばアメリカやカナダも隣国になります。
現実的に考えて、
ロシア・中国・韓国・北朝鮮・台湾
が隣国と言えるでしょうか。
このうち、台湾について、民間レベルでの交流は盛んなものの、政府として日本は台湾を独立国と認めていません。
さらに北朝鮮とは国交がありません。
ロシア、韓国、中国とはそれぞれ領土問題を抱えています。
つまり、日本には正式に味方と言える国が近隣にはないのです。
これが現在の日本の特殊な状況たるところです。
日本が正式に同盟国を結んでいるのはアメリカ合衆国だけなのです。
こぶた
感覚的に仲がいいのは台湾だよね!でも正式な関係はないのか・・・
ぶたちく先生
国際政治は本当に難しいんだ。その時々の各国の政策次第で親密になるか疎遠になるかが決まってしまうからね・・・

日本の歴史・明治維新まで

日本について簡単におさらいしたところで・・・
まずは日本史を簡単に振り返ってみましょう。
明治維新までのテーマは「なぜ日本は他国の植民地にならなかったのか」です。
「そんなもん武士の強さだろうがー!!」
という声が聞こえてきそうですが・・・
もちろん、先人が全力で戦った、それは間違いなくあるでしょう。
しかし、今回はあくまで地政学のお話です。
長らく「極東の小国」であった日本。
単純に国力や軍事力だけをみれば、もっと他国に攻め込まれたり、様々な戦争に巻き込まれたりしてもおかしくありませんでした。
ちなみにアジアで事実上植民地にならなかったのは、タイと日本だけです。
なぜ日本は植民地にならなかったのでしょうか?

日本は外国との戦争が少ない

みなさん、世界史の勉強をしたことがありますか?
ヨーロッパとか戦争が起こり過ぎてワケわかんないって思いませんか?
もはや内戦かどうかも難しいですよね。
でも明治維新まで、日本が海外と戦争したことって実はほとんどありません。
戦国時代など国内では戦争だらけですが・・・
奈良時代ぐらいまでは朝鮮半島での戦争がちょくちょくありました。
しかし、その後は、
鎌倉時代の元寇
室町時代の応永の外寇
安土桃山時代の文禄・慶長の役
この後は幕末の薩英戦争、下関戦争ぐらいです。
こぶた
「応永の外寇」は李氏朝鮮が対馬に侵攻してきた事件だね!対馬の宗氏が奮戦して撃退したよ!

周囲を海で囲まれている

日本対外国の戦争が少なかった理由として考えられることがあります。

まず一番は「四方を海に囲われている」です。
地政学っぽくなってきましたね!
今でこそ飛行機があるものの、かつて海の向こうに行くには船しかありません
しかも、科学技術もそこまで進歩していない大昔。
航海も命懸けで行われていました。
さらに、「日本は小さな国ではない」これも重要です。
かつて元寇の際には、日本に対して4000隻を超える船がやってきました。
元の国は朝鮮半島を支配下に置いていたので、すぐ近くでした。
しかし、仮にヨーロッパの国がやってくるとしても、日本までの航海だけでものすごくリスクがあるのです。
日本に最も攻めてきそうな国は中国の王朝ですが、東シナ海、日本海があるため、容易に攻めては来られませんでした。
ぶたちく先生
元寇での日本の勝利の要因に暴風雨もあったと言われているからね

日本には何もなかった

まず、日本に来ることそのものにリスクがある、とお話ししました。
今回は少し自虐的なお話です。
それは「日本には無理して攻めるほど手に入れたいものがない」ということです。
中世後期から日本の認知度は世界に広まっていきます。
しかし、日本には残念ながらなにもありませんでした・・・
例えば、インドの胡椒、中国のお茶・・・
これらはヨーロッパの嗜好品として植民地として狙われる理由にもなりました。
インドで手に入った胡椒の為に東インド会社を作ったとされるほどです。
それでも、16世紀からは石見銀山の発見により、海外の目が日本に向きます。
当時、銀は世界通貨であり、とても重要な鉱物でした。
しかし、あまりにも急激な採掘のせいで衰退も早く、17世紀前半にはまた外国の興味もなくなってしまったのです。
つまり、日本は来ることも大変な上、争ってまで手に入れたいものがなかったのです。
また、当時、中国から見た日本の向こう側は太平洋が広がるだけ・・・
中国もロシアもヨーロッパに注意を払うことも非常に重要です。
おそらく日本から攻めてくるほどの軍事力も文化力もない、そんな思いもあったかもしれません。
こぶた
ホントに失礼な話だよ・・・

そもそも日本のことをほとんど知らない

まずヨーロッパという国を考えて見ましょう。
ヨーロッパから見て日本は中国、ロシアを挟んだ反対側にあります。
「極東」という言葉はヨーロッパから見た日本のこと。
それぐらい日本はヨーロッパにとって遠い国なのです。
ヨーロッパ人が日本に来たのは鉄砲が伝わった1543年(名前不明)。
そのあたりから、日本のことがヨーロッパで認知されていったと考えられています。
しかも、明(中国)の貿易船に乗っていて漂着しただけのことで、別に日本に来たかったわけでもありません。
ちなみに「東方見聞録」で日本を「黄金の国」と称したマルコポーロは日本に来ていません
あくまで日本のことを元の国などで聞きつけ、想像で書いたものに過ぎないのです。
こぶた
日本に何もないとか、別に行きたくなかったとか・・・腹立つなぁ!!
ぶたちく先生
まぁまぁ・・・今の日本にはとても誇れる文化がある!それは日本人が今までずっと大切にしてきたものなんだよ!!
後編に続きます!