行動経済学②~自分の傾向を知り、自分らしく生きよう~

前回からの続きです!

プロスペクト理論

プロスペクト理論は、行動経済学における主要理論で、心理学者ダニエル・カーネマンにより提唱されました。
これは、選択に損得や確率が関係する状況での人間の意思決定プロセスを説明する理論です。
これも具体例を挙げるとわかりやすいので、ご説明しましょう。

得をする場合のリスク回避

A.「確実に1万円もらえる。」
B.「50%の確率で2万円もらえる」
という選択肢があるとしましょう?
あなたはどちらを選びますか?
多くの人がAの「確実な1万円」を選びます。
でもよく考えたら、二つの選択肢の期待値は同じ。
だから、本来は、Aを選ぶ人とBを選ぶ人は半々ぐらいになるはずなのです。
なぜこのような偏りがでるのでしょうか?
実はこの場合、Aを選ぶ人は「50%の確率で何ももらえない」ことを恐れます。
つまり、人間は、得をするような状況の場合は、リスクを回避する傾向にあるのです。

損をしている場合のリスク志向

今度は逆パターンです。
例えば、競馬なんかを想像してみてください。
とあるレースの馬券を買ったものの、予想が外れてしまいました。
お金も減ってしまいましたが、レースはあと一つ残っています・・・
皆さんがこの状況であれば、次のレースはどうしますか?
この場合、多くの人は、損を取り返すべく、より配当金の大きい馬券を買ったり、大きなお金を賭けて一発逆転を狙う傾向があります。
不思議なもので、得をする場合はリスクを回避するのに、損をしているときはリスクをとるのです。
人間っておもしろいですよね。

確率の評価がすごく苦手

冒頭で話した宝くじの例ですが、「ジャンボ宝くじ」が当たるのは約500万人に1人。
でも人間はこの宝くじがあたることを信じて、行列をなして宝くじを購入し、当選を夢見ます。
また、飛行機事故が怖くて飛行機に乗らない、という人って周りにいませんか?
実は飛行機事故で死亡する確率は数百万分の1と言われており、宝くじが当たる確率より低いんですね。
つまり、宝くじも飛行機事故もそうなのですが、ものすごく低い確率を過大評価しているのです。
反対に、「手術の成功率は99%です」と言われた場合に、成功率を実際よりも低く考える人が多いようです。
自分や身近な人の命や、生活にかかわることは、高い確率を過小評価してしまう傾向にあります。
このように、人間は合理的に確率を評価する、ということがとても苦手なのです。
こぶた
身に覚えがありすぎる・・・
ぶたちく先生
いやいや、多くの人が持っている傾向だから大丈夫だよ!

ナッジ理論

ナッジとは「ヒジで軽く小突くように、自発的に望ましい行動を選択するように促す」という意味です。
望ましい行動とは、相手を自分の思うように動かしたいだけでなく、社会的に望ましい行動をとらせたい場合も含みます。
さっそく具体例を見てみましょう。

トイレの工夫

皆さん、ある時期から、トイレにこんな貼り紙があるのを見たことがありませんか?
「いつもトイレをきれいにご利用いただいてありがとうございます。」
こうすることによって、トイレの利用者は、「いつもきれいに利用する他人」や、「トイレを掃除する人」を意識し、同調効果が生まれたり、清掃員の方に迷惑をかけないようにしたい、という心理が働くのです。
他にも、男性しかわからないかもしれませんが、小便器に「ハエ」のシールが貼ってあることもありますよね。
これも人間が「的に狙いを定める」という心理を利用して、トイレが汚くならないように対策しているのです。

メルマガの配信

皆さんインターネット販売の購入画面などで、「メルマガ配信を希望する」というチェック欄を見たことがあると思います。
何気なくスルーする方も多いと思うのですが、ここのチェック欄にあらかじめチェックが入っていることってありませんか?
これもナッジ理論に基づく方法なのです。
販売者の方からすると、今後の販売につなぎたいので、メルマガを配信したいですよね?
だから、あらかじめチェックを入れておくことにより、「チェックを外す手間」を与えることで、メルマガ配信を増やそうとしているのです。
逆に、このチェックボックスにチェックが入ってなかったら、わざわざメルマガ配信の欄にチェック入れる人は少ないと思います。
些細なことですが、これも人の心理を利用した方法なのです。

ネットオークション

オークションで自分の落札価格を提示した後、別の人がさらに高い落札価格を提示した場合を考えてください。
ここで人間はこう思います。
「持っていたものを失ってしまった!」
人間には、モノを手放したくない、失いたくないという心理があります。
だから、人間はモノを失いたくない一心で、さらに高い落札価格を提示するのです。
いやぁ・・・うまくできてますね。
これは、自分の持ち物などを売却するときにも働きます。
つまり、自分の持っているモノの価値をより高く感じるために、売却価格に納得できないことが多いのです。
こぶた
これが、いつの間にか行動が誘導されているってことだね!
ぶたちく先生
ナッジ理論は、人の移動や行動をスムーズにしたいときに非常に有効なんだ!コロナ流行時に列に並ぶ人の間隔を空けさせたい場合に大活躍したよ!

最後に

今回は2回にわたって行動経済学についてお話ししました。
これは「ちゃんといつもしっかりと考えて行動しなさい」という話ではないです。
変化を嫌い
今が一番大事で
得ることより失うことに重きをおき
すぐ先延ばしにし
選択肢が増えると選べず
周囲の目を気にするのが人間という生き物です。
時に非合理に、感情的に、直感的に行動することは人間らしい行動なのです。
前回記載しているように、「さほど重要ではないこと」と脳が判断した場合の直感に過ぎません。
重要なことはしっかりと考えて判断できるように、脳は日々振り分けをしています。
行動経済学を学ぶことで、自分の選択や、行動の傾向を知ることができます。
特にヒューリティクスの箇所は、私自身も大いに考えさせられました。
こうして自分を知ることが、後悔のない選択につながるようになればと思います!