前回までの記事はこちら!
お酒①「飲まれるぐらいなら飲むな」~人が酔う仕組みと酔いの程度~
お酒②「お酒も人も強い弱いがある」~お酒を飲む心構えと入門編お酒うんちく~
目次
薬物としてのアルコール
今回の記事ではアルコール依存症について取り上げます。
しかし、その前にアルコールがいかに危ないものかお話ししましょう。
アルコールは薬物です。
アルコール依存症について学ぶ前に、まず前提を確認しないといけません。
アルコールは薬物です。
厚生労働省のページにもはっきりと記載があります。
薬物と言えばコカイン、ヘロイン、大麻、覚せい剤・・・
聞いただけでヤバそうなものばかりなのですが、アルコールはここに並ぶものなのです。
アルコールが危ないって意識しやすくなったでしょうか。
「薬物」って聞くと、急に怖くなってくるね・・・
薬物の中でも安全なわけでもない
アルコールが薬物っていってもコンビニでも売ってるじゃん!そんなに危なくないでしょ!
そんなあなたにビックリするデータを提供しましょう。
イギリスの精神科医の論文では、アルコールの有害性は大麻や麻薬よりも高く、その依存性は覚せい剤よりも高いとされているのです。
もちろん、これは大麻や覚せい剤が大したことないっていう話ではないです。
アルコールが大麻や覚せい剤ぐらい危ないという自覚を持つべきなのです。
日本でのアルコールは立ち位置は合法なだけで、危険な薬物であるという認識をまず持ってください。
なんでアルコールは合法なんだろう?
長く人間の生活に根差してきたから、禁止するのが難しかったのかもしれないね・・・
アルコール依存症
アルコール依存症。
なんだか、飲酒を我慢できないダメな人・・・みたいなイメージないですか?
正確には我慢することができない、という状態なのです。
言葉遊びのようですが・・・
アルコール依存症を発症する人は非常に多く、芸能人が発症しているのも耳に入ります。
ではアルコール依存症とはどんなものなのでしょうか?
我慢したくてもできない、ってことかな?
アルコール依存症とは
アルコール依存症とは、お酒の摂取をコントロールできない状況です。
具体的には、飲む量や飲むタイミング、状況をコントロールできなくなります。
例えば、車に乗る前や仕事に行く前など、飲んではいけない状態でも飲酒することが我慢できないのです。
自分や人の行動、仕事、人間関係よりも飲酒が最優先になります。
自分の脳が制御できないんですね・・・
麻薬や覚せい剤の依存症と同じ薬物依存症の一つで、病気でもあります。
なんで我慢できないのか!って問い詰めるのは既に酷な状況だよね・・・
アルコール依存症になるまで
なぜ人はアルコール依存症になるのでしょうか?
人がアルコール依存症になっていく過程を解説しましょう。
体が耐性を持つ
習慣的に飲酒していると、人の身体は耐性をもちます。
身体がアルコールに慣れてきて、酔いにくくなるのです。
よく言う「酒に強くなってきた!」という状態ですね。
こうなると、今までの酒量では酔えなくなるので、飲んだ気がしなくなるのです。
結果的に酒量が徐々に増加します。
精神依存
次に訪れるのが「精神依存」という状態。
精神依存になると、酒がないと物足りなくなり、飲みたいという欲求を感じ始めます。
さらに精神依存が強くなっていくと、酒がなくなると家のなかを探したり、出かけて買いに行くような行動をとり始めます。
飲酒する欲求を抑えられなくなり、飲酒しないでいることが難しくなります。
身体依存
身体が耐性をもち、さらに精神依存が形成され、その状態で飲酒を続けると「身体依存」という状態が出現します。
身体依存になると、酒が切れたときに離脱症状という症状が出現します。
離脱症状は不眠、発汗、震え、不安などが挙げれられます。
いわゆる「禁断症状」ですね。
さらに重症になると幻覚が見えたり、けいれん発作を起こしたりすることもあります。
お酒を止めたり減らしたりすると離脱症状が出る、だから飲酒するという悪循環。
どんどん飲酒を止めることが難しくなるのです。
こうして人はアルコール依存症になるのです。
止めたくても止められない悪循環・・・本当に薬物依存症そのものだね・・・
アルコール依存症になりやすい人
アルコール依存症についてよくわかりましたが・・・
アルコール依存症を発症しやすい人はいるのでしょうか?
次に挙げる人はアルコール依存症になりやすいとされています。
順番に見てみましょう。
未成年時から飲酒していた
これが未成年者が飲酒を禁止される理由の一つです。
飲酒を始める年齢が早ければ早いほど依存症になる可能性が高いという統計があります。
飲酒開始年齢が1年早まるたびに依存症になる可能性は4~5%上がるとも言われています。
家族や友人に酒飲みが多い
近しい人に飲酒する習慣があると飲酒に対する警戒心が低くなる傾向があります。
場合によってはお父さんが毎日酔って帰ってくると「これが大人だ」なんて思うかもしれませんよね。
特にアルコール依存症の親を持つ人は依存症になる確率が4倍になります。
これには遺伝も関係しているそうです。
女性
前回の記事でも書いたように、そもそも男性に比べて女性の方がアルコール耐性が低いです。
同じ飲酒量でも女性の方が血中アルコール濃度が高いので、依存症になるまでの期間も女性の方が短いです。
近年では若い女性の依存症が増えているそうです。
孤独
なんとなく辛いお話ですが・・・
退職や配偶者の方との別れなどで孤独を感じると、それを紛らわすため飲酒をするのです。
酔いがさめると現実に戻るのでまた飲酒・・・
人間の心は人間関係で満足感や幸福感を得ます。
社会との関りは老若男女問わず大切なことなのです。
自分が依存症になりやすいかどうか知っておくと防げるかもしれないね!
そうだね!大切なのは向き合い方。依存症になりたい人はどこにもいないからね!
アルコール依存症により引き起こされること
先ほど記載したようにアルコール依存症になると離脱症状が現れます。
同時に、こうして増えた酒量が身体にどのように影響するのでしょうか?
肝臓
予想通り、というか当然というか肝臓にはとてつもない負担がかかります。
本人が酔いにくい、というだけで肝臓が大量のアルコールを分解させられることは変わりません。
脂肪肝、肝炎、肝硬変などの肝臓障害が引き起こされます。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、我慢強く頑張る臓器です。
そのため、症状が出た時には既に重症化していることも珍しくありません。
定期的な検査で早期発見し、肝臓の悲鳴を早くキャッチしましょう。
肝臓くん・・・君はなんて健気なんだ・・・僕は大切にするよ!
精神疾患
肝臓の他にもアルコール依存症は膵臓など人間のあらゆる臓器に大きな影響を与えます。
また糖尿病のリスクも格段にあがります。
しかし、それと同じぐらい危ないのが精神疾患です。
依存症はうつ病、躁うつ病、統合失調症という精神疾患を誘発する可能性もあります。
精神的な合併症をも併発するのです。
その他、アルコールの過剰摂取は脳委縮をおこし、認知症の発症など認知機能の低下も懸念されています。
酒は百薬の長っていうけど、飲み過ぎは絶対にダメなんだね!
徒然草を書いた兼好法師は「百薬の長とは言えど、万病は酒で起こる」と書いたらしいよ!
アルコール依存症と向きあう
アルコール依存症の治療
アルコール依存症になってしまったらどうすればいいのでしょうか?
アルコール依存症は病気なので、治療が必要になります。
薬物療法やカウンセリングなどもありますが・・・
大前提として一生断酒です。
一生です。
もう二度とお酒を飲んではいけません。
「お酒を断つ」ということが治療なのです。
まず、離脱症状を止めるところから始めなければいけません。
治療薬もありますが、どちらかというと「お酒を飲まないための薬」なのです。
離脱症状を停止させた後は、精神力の回復や併発した病気の治療。
最終的に社会復帰することを目的とします。
読んで頂ければわかる通り、薬物依存症の治療と同じです。
アルコール依存症とはまさに薬物依存症なのです。
お酒が好きだからこそ、自分でコントロールしないといけないんだよ!
アルコール依存症にならないために
アルコール依存症にならないためにはどのようにすればよいのでしょうか。
というか考えるまでもありません・・・
「適量」を守ること。
男性であればアルコール摂取を20グラム、女性であれば10グラムに抑えましょう。
仮にビールに換算すると、ビールは500ミリ程度です。
女性であれば半分の250ミリ。
あまり深く考えると楽しくないかもしれないですが・・・
「飲み過ぎない!」
これだけは忘れないでください。
さらに、少なくとも週2日は休肝日を作りましょう。
みなさんも休みたいように、肝臓にもちゃんと休みをあげてくださいね。
しっかりとリスクを知ったうえで考えて飲むっていうことだね!
そうだね!あと、飲みたくない人、飲めない人は絶対に無理して飲まなくていいからね!
最後に
3回に渡ってお酒についてお話してきました。
私がこの記事を書こうと思ったのは、二つ理由があります。
1つはお酒で人生を狂わせる人を見て本当にもったいないと思ったこと。
もう1つはお酒を飲めない人や飲みたくない人にお酒を飲ませることがどういうことか知って欲しかったからです。
みなさんの周りにもいませんか?
普段はとても優しくて頼もしいのに、お酒を飲んで人が変わる人。
飲み会でいやいやお酒飲んでる人。
飲み会の本来の目的は楽しく過ごすことのはず。
お酒を飲むことが楽しいかどうかは人によりますよね。
生涯で人口の1%にあたる100万人がアルコール依存症を発症すると言われています。
そして、毎年1万人が急性アルコール中毒で救急搬送されています。
お酒と上手に付き合い、正しい知識を持って皆さんが楽しく過ごされることを祈っております。